通貨が堕落するとき asin:406273608X
「通貨が堕落するとき」木村剛(図書館)を読む。2000年5月初版。
経済小説
面白かったけど、経済理解の為には面白い/つまらないで評価してはいけないのかも。堺屋太一の「油断」が読み物として近いか。著者は日銀マンから民間に行き、石原銀行と同コンセプントの日本振興銀行を立ち上げた人。
この本ではリフレ派のクルーグマン教授を個人攻撃するほど反リフレ。*1
「通貨が堕落するとき」の中で、日銀の国債引き受けが焦点になる。そんなの前代未聞で先進国では皆無だという主張が本書の中でされる。現在どうなっているかは以下のようです。
日米欧の中央銀行の違い。(貞子ちゃんの連れ連れ日記さん)
あと終盤の展開は現在の視点から見るとお笑い種なのかな、とも思う。ハイパーインフレの開始が原油高騰を契機としているのが少し気になるけど、円安の中での原油高という点が違う*2 本書の日本再生プランは日本が3回くらい死んでそう。
リフレの問題を離れると「銀行って当時こんなに潰れそうだったんだっけ」という驚きがある。拓銀つぶすくらいなら、中央の銀行つぶしたほうが負担が一地方に集中しなくて良いのに、とかも当時思ったような思わないような。
本書ではなく現実世界では、2000年にジャパン・プレミアム*3は終了し正常化している。ソブリンリスク(危ない国の金融リスク)。
328頁の事件は、現実世界では対応する事件は多分無い……と思う。(ネットで調べた限り)
アメリカのアクティブな役人が日本の政治家と会い、「わたしだけじゃない。これはアメリカでのコンセンサスです。いや、世界のコンセンサスといっていい」という口調で説得するのは なんだかありそうな場面だ。そのアメリカ人個人の考えでも、こんな事言いそうな気がする。安倍前首相が「給油の一時中断」をあれほど嫌がったのは上記のような説得シーンがあったからでは?と妄想。

*1:なお、前エントリでは田中秀臣木村剛をくさしていた。

*2:そういえば、現在は円高というよりドル安で、ユーロに対して円は安くなっているとWBSが言ってたな…

*3:日本金融機関が国際市場で資金調達する際に求められる上乗せ金利。当時、日本の財務内容は信用できなかった為