マルドゥック・スクランブル―The First Compression 圧縮 (ハヤカワ文庫JA) マルドゥック・スクランブル―The Second Combustion 燃焼 (ハヤカワ文庫JA) マルドゥック・スクランブル―The Third Exhaust 排気 (ハヤカワ文庫JA)
マルドゥック・スクランブル」1-3巻 冲方丁(新刊)を読んだ。面白かった。

失敗をこわがる人は科学者にはなれない。科学もやはり頭の悪い命知らずの死骸の山の上に築かれた殿堂であり、血の川のほとりに咲いた花園である。−寺田寅彦

科学と賭博の物語だ。
科学とは人類(プレイヤー)共通の利益が有り得る非ゼロ和ゲーム。主人公の保護者のドクターの戦場であり、世界を規定する戦いだ。
賭博とは互いが喰い合うゼロ和ゲーム。主人公である少女が生き抜き、生き残る闘い。
賭博のシーンが素晴らしい。作者が賭博の場面を書き終えて「ようやく自分にSFが書けた」と自負しただけのことはある。沢木耕太郎の「深夜特急」1のマカオ篇以来の面白さだった。
「ハードボイルドでサイバーパンク」なんて陽のあたる大通りの様に陳腐だけど、この作者には可能性がある。
惜しむらくは賭博と戦闘のトドメのシーンがわかりにくい。(読み手の責任か)

タマゴについての言葉遊びだが、ボイルドは茹で卵としてサニー・サイド・アップ→片面目玉焼き。
とすると焦げ付きは その焦げ付きとひっかけているのか。