カビ博士奮闘記―私、カビの味方です 
「カビ博士奮闘記」宮治誠(図書館)を読む。面白い。
カビ研究者によるカビの本。主に医療系。かもされる。面白いのに文庫になってないのか。
ばい菌の"ばい"はカビのこと。カビ*1と細菌でばい菌。
1992年「生物の多様性に関する条約」という国際条約が多国間で締結された。微生物といえどもその国の重要な資源であり、先進国は勝手にその微生物を国外に持ち出してはいけない、という趣旨。青カビからペニシリンが開発されて以来、先進国は自然豊富な途上国に出向いて微生物を持ち帰り、富を築いてきた。途上国側からは ある種の略奪行為と認識していたのが条約締結の経緯。wikiを見ると日本を含む188ヶ国が条約締結しているが、アメリカは自国の利益から締結していない。
日本でカビの保存施設を国立で作った著者によると、彼のカビの採集方法は
・現地の研究者に役立つようなテーマで共同研究を行う
・面倒でも菌の分離は現地で行う
・相手と日本で1セットずつ菌株を保存するようにし、必要な時に日本の保存菌株をいつでも提供する事を約束する
などなど。気をつかってるなー。
体内に住む1番メジャーなカビはカンジダ。母乳を通して生後2、3ヶ月で体内に定着。膣カンジダは性交渉だけでなく、ホルモンバランスの崩れ*2抗生物質を飲んだ時*3にも発症する事がある。
水虫もカビ。皮膚の角質に住み着く。「水虫の薬は効かない」は俗説で、ちゃんと効いてる。新しい菌がまた付くだけ。爪にうつる水虫*4は塗り薬が効かない。飲み薬で直す。飲み薬が無かった時代、爪を剥がすという拷問のような治療も著者は行ったことがあるとのこと。
荒っぽいと言えば「梅毒の温熱療法」は、梅毒にかかった人をわざとマラリアに感染させ、そのマラリアの熱で梅毒菌を殺すそうだ。ちなみに梅毒菌は細菌。治療薬の抗生物質はカビから*5。日本でも戦後まもなくの頃まで行われていたとのこと。
以下、ちょっと知らなければ良かった類いの知識かもしれないので行を空けます。
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えー、では、
「キノコもカビ」なんですと。これはあまり知りたくなかった。
キノコを使った抗ガン剤は免疫を高める系。クレスチン、レンチナンなど承認されてる。
ちなみに丸山ワクチンもガン細胞を殺さない免疫系だけど承認された薬ではないそうだ。
感想リンク デレリクツさん ひなみっくすの読書日記さん
連想漫画 「もやしもん」(こちらは医療系ではなく農学系)
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*1:カビのかっこいい呼び方は"真菌"。

*2:月経や妊娠など

*3:ピルの長期服用なども。

*4:水虫の5%は爪にうつるそうだ

*5:放線菌というカビと細菌の中間に位置する生物からも抗生物質は作られる。放線菌は細菌にカテゴライズされる。