崋山と長英―他一編 (山手樹一郎長編時代小説全集 (4))  
「崋山と長英」山手樹一郎(図書館)を読んだ。面白い。
長編『崋山と長英』と中編『天保の鬼』の2編。歴史小説
どちらも渡辺崋山高野長英を捕えた蛮社の獄の話。並べてある通り『崋山と長英』から読むのが良いと思う。
山手樹一郎といえば浪人とか奉公とか古い関係を主題に選ぶ人だから、蘭学みたいなハイカラな世界は合わないかと思ったが、そんな事もなかった。蘭学だからこそ、古い仲間意識とか忠勤とか際立つのだな、と。
山手樹一郎の世界でたびたび悪役となる鳥居耀蔵が登場してるのは笑った。いつもより小粒な耀蔵。
以前、フランス革命の小説を読んだ時、
江戸には法律もあるし 出版文化もあったのに、フランスの様に法律家がビラや新聞を使って政体を論じるような文化がなかった、
と思ったが、法律家の代わりに蘭学者がその位置にいたのだな*1、と本書で気付かされた。政体に対する意見を言うために、なにか書いて世間に問う、のは同じ。幕府は すぐ言論統制を行うし、なかなか亡命ができない環境だから、フランスより厳しいだろうが、東西全く違うわけではないのだな、と。
手紙など候文(そうろうぶん)そのままを読ませる箇所あって、面倒なので幾つか飛ばした。
以下メモ。
・「東洋の学問は身を修めることに始まって、国を治めるところに行く、西洋の学問は まず物を知ることに始まり、物を窮めるところへ行く」
この考えが文系優遇/理系冷遇の元か?
渡辺崋山儒教の師の松崎慊堂の逸話。
松崎は故郷の友人を江戸に迎えて遊女と遊んだ後、夜中に起きて読書をしていた。遊女が怪しんで、月々の学費を訊いた。松崎は「ニ方金だ」と答える。遊女は笑い「そんなのわっちの一日の花代。簡単ざんす。しばらく送ってあげましょう」と請け負った。遊女は毎月ニ方金を送り、松崎を助けた。彼の学が進んで家をなした頃、遊女は やや容色が衰えた。松崎は遊女を落籍し、他にめとらなかった。
似た話をお笑いとストリッパーで聞いた事がある……と思ったら、萩本欽一かっっ。*2
・江戸時代のオランダ人による日本人評。
「模倣せる事いたって敏捷なれども、物を創始すること能わず。これを吾国にて軽脳という」
トルコ人と似てるそうだ。
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*1:あとは国学者か。

*2:雑誌の「お笑いイイ話」で読んだ記事だから真偽は保証しないけど。