絶望!佐川急便に明日はない! 
「絶望! 佐川急便に明日はない!」佐川清ほか(図書館)を読む。ある意味面白い。
佐川急便の創業者、佐川清が退陣後に幹部を告発する本。1999年出版。佐川清が書いたのではないという形式、一応。
佐川清は"ドライバーに高報酬を与える事が正義*1"という考えのようだ。佐川急便に事務職員が増えすぎていると嘆く。月給110万円が40万円になってしまってはドライバーがクロネコヤマトに逃げ出してしまう、との事。
佐川清サイドが書いた本であり、腐敗した幹部と正しい佐川清という構図だが、なんというか荒唐無稽な社内闘争で「銀と金」7巻-*2や「ゼウスガーデン衰亡史」*3を思い出した。
主管店社長(幹部)の退職金が一律8億6000万円である事を佐川清は糾弾する。辞任状況*4に関わらず8億6000万円なのは成程 会社を食い物にしてるのかもしれないが、別の頁には佐川清が「佐川マンが野球をする場所がない」と自前の球場を36億円で造る話を聞くと何だかなーと思ってしまう。ドライバー思いなのかもしれないが。
そもそも佐川清が金に大雑把すぎるのではないか。*5
・会社がフェスティバルに出した協賛金1億7000万円を相手先から「いえ、1億しか頂いてませんが…」と言われて発覚する社内の着服
地方公共団体に「老人ホームを建てるので」と言われて、言うなりにドンドン佐川清個人で寄付を続け*6、受け手の地方公共団体が腐敗してしまった
この辺は金を出す側のいい加減さがあるのではないかと思う。
『会社が幹部に多額の報酬を渡すのは、その金でドライバーの面倒を見させる為』論理も理解しにくい。全然面倒を見ずに着服していると佐川清は嘆くが、素直に別予算(社内交際費?)を計上した方が目的に適うのではあるまいか。
以下、佐川清vs地方幹部の抗争でちょっと信じ難いエピソード。
元々、佐川急便では 荷物の発送店が3割・路線に3割・到着店に3割・本部が1割という取り分だったという。
或る幹部にシステムを任せてたら、いつの間にか発送店/到着店に37%・路線に32%になってて、本部がマイナス6%となり、毎月足りない分を本社が吐き出していたとの事。これは凄い。
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殺伐としたエピソードが続いたのでちょっといい話。
佐川清語るに
「暴走族あがりでイキのいいドライバーもずいぶん入ってくる。やはり元暴走族で鍛えているから運転が上手い。それに若い頃からケンカの修羅場を潜ってきているからなのか、人情の機微というか、人の痛みや苦しみをわかる男たちが多かった。それでつい 行き過ぎてスピード違反で捕まる事なんか日常茶飯事ですよ。それで経理の真面目タイプの男が言うんです。
『会長、警察からスピード違反が多すぎると文句がきています』とか。まるでボケたことばかり言うから
『バカ野郎、スピード違反しないドライバーに仕事ができるか。スピード出すからお前の月給も高いんだ!!』」
スピード違反の話になると佐川清の顔がほころぶのだった。
別に いい話でもないか。


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*1:佐川清は地方に行くと、彼が利用したタクシーの運転手に1万円握らせ、地元の運送会社の給料を聞き出したという。

*2:福本伸行の漫画。「病院軟禁」とか。

*3:小林恭二の小説

*4:不祥事やら会社の危機やら在社年数やら。

*5:本書を信じるなら

*6:ある町に16億円くらい