残酷号事件 the cruel tale of ZANKOKU-GO (講談社ノベルス) 
残酷号事件上遠野浩平(新刊)を読む。面白い。
シリーズ5作目。SF。イラスト:やまさきもへじ
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文章は所々首を捻る箇所があったが、妄想力は素晴らしい。
とりあえずSFとカテゴライズしてしまったが、判別の難しい小説である。シリーズ1作目は"竜を殺したのは誰か"というSFとミステリの融合カテゴリだった。その後、「海賊島事件」で"オサマ・ビン・ラディンがアフガンにかくまわれた当時の事件"を小説化するというPF(ポリティックフィクション)の要素が加わる。
現実と似た世界でSF+ミステリ+PFを展開するなら「器用だな」くらいの感想だが、基本ファンタジー世界でやるのだから恐るべき妄想力と言わざるをえない。最も、今回ミステリ要素に関しては「一応気にしてたのか」くらいの付け足しっぽいが。
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本作で一番驚いた仕掛けは"主人公補正"の扱い方。
ロザンの能力って つまり"主人公補正"じゃないのか と思ってメタ読みしてたのだが、その能力がああいう展開を招くとは。
覇軍の人たちは古代中国の墨家がモデルか。
残酷号は何かの兵器の隠喩かと色々当てはめてたのだけど、"超全自動なバットマン"が近いかと。
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二番目に心に残ったのは前作との絡み。
本当に前作は主筋と関係ない所なんだな、と。(本作を主とするなら)
ブギーポップは笑わない」末真和子の"関係ない所で救って貰った"無常感を理解。
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わかりにくい点を自分なりに整理。
覇軍の人たちが最初に残酷号を攻めて最後に残酷号を守ったのは、レギューンの有無の違いか。
ザ・クロス(とその変形)が魔法を吸い取るという設定なのね。十字架って罪を吸収してくれるんだっけ。
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カラーイラスト美麗なのだけども、ネーティスの顔色ひどす。
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あとがき引用。

(正義の味方が仮面を付けている事について)彼らは"正義"そのものに対して恥ずかしい思いを持っているのかも、と思う。そんなものはこの世に一度も生まれたことがないのに、そのために戦うなんて、なんか変ですよね---でもやめる気ないんですけど、とか。

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感想リンク 木耳さん 魔王14歳の幸福な電波さん
カテゴリ連想小説 「十二国記
十二国記」に比べると粗雑ではあるけど、その粗雑さで現実と噛み合わせたり、続刊したりを可能にしてるのだろう。