町屋と人形さまの町おこし
「町屋と人形さまの町おこし」吉川美貴(図書館)を読む。
町おこし実録。村上市(新潟県)の商店主、吉川真嗣34才(当時)が町おこしイベントを軌道に乗せるまでの話。
イベント内容は「商店主が個人で保有してる人形を客が無料で鑑賞できる」というもの。座敷に通されて人形の由来などの話が聞け、古い日本家屋(町屋)も鑑賞できるといった感じらしい。人形を見せる事自体には儲けが発生しない。集客としての効果のみ。1ヶ月間のイベント。
吉川真嗣は商店街などの枠を超え、企画に賛同してくれる商店で「商人会」を結成する所から始める。最初22店舗、第1回イベント前60店。
細かい金額など数字が記述されているのが興味深かった。
イベントに掛かった費用は35万円(チラシ費が30万円)とか*1。事前に3回行った全体打ち合わせ会議の参加者が1回目20人、3回目6人しか集まらなかったとか。
イベントに来てくれたお客への対応も基本そのお店に任せるとか、もしこのイベントを事前に採点したら「こんな怖いコトできるか」とイベント中止を勧めるかも。
ま、結局イベントは成功*2して恒例となる。1ヶ月で約3万人の集客を達成。経済効果は1億円以上*3。賞もいろいろ獲った。
以下面白いと思った事を幾つか。
・商店街の道路拡幅に吉川真嗣は反対の立場を採っており、当初その主張に対する反発がかなりあったこと
この町並みは古臭いのでなく、集客をもたらし保存に値する町並みなのだ、という主張なのだが、道路拡幅という既定路線に反対するのは金の絡むホットな町のトピックだったらしい。
・現代的な駅前商店街の店のイベント参入を拒んだこと
イベント成功を見た商店主の当然な行動だが、イメージ統一の為に拒む。客の事を考えた方針ともいえる。「お客は駅前商店街を通るのだし、独自に人形を飾るのは自由です」のスタンス。
まちおこしイベント成功の秘訣
1.「できる範囲でやる」は間違い。最初に失敗したら次は実行に行く前に霧消する。
2.「お金は?」「手間は?」「なにかあったら責任は?」と企画を説明したら問われるだろうが、全て企画者が引き受ける気持ちがなければ成功しない。「お金の事は心配いりません」「面倒な事は させません。ここの部分だけやってくれれば後は自分がやります」「責任は自分がとります」。
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イベントを成功させた吉川真嗣は凄い人だなあ、と思って読んでたが、著者が吉川真嗣の妻である事に気付く。これは叙述トリックで実は吉川美貴の力で成功したイベントでは?と、ミステリ脳で推理した。
序文か解説で外部の視点が欲しいところ。
感想リンク フォトログ☆もうぞさん
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*1:鷲宮町(埼玉県)の萌えおこしで使われたらき☆すた神輿は総経費1万5千円。ローコスト基本か。

*2:NHK新日曜美術館」にイベント途中で取り上げられた事が成功の一因では著者は分析。

*3:ちなみに第3回時の来訪者数は7万人。1人あたりの平均支出額は宿泊客で7760円、日帰り客で5966円(新潟大学調べ)。