再読

美濃牛 (講談社文庫)
「美濃牛」殊能将之(図書館)を再読する。面白い。
これはミステリなのかな?かな?と区分不能な作品を生み出す殊能将之だが、本作からその萌芽が見えた。超常的(スーパーナチュラ)なモノに関する姿勢もそうだが、小説の展開の仕方がトリックに主眼を置いてない。トリックにそっけないと言ってもいい。章ごとに徐々に視点を変えていくやり方は小説的に丁寧で、読ませるがミステリとしての切迫感は無かった。*1
オウム真理教阪神大震災に関する言及があり、少し時代を感じた。(後、バブルとかISDNとか)いや、逆に1995年以前の小説は「前の時代」に属する古典なのかもとも思う。
トリック的な事だが、瀬尾修一が地の文で灰田虎彦と表記されていたのが後の伏線と言える。つまり人名は周囲から呼ばれている名前を本作では採用してますよ、というアナウンスだ。しかし陣一郎のすり替えは無理があるというか隔離が甘い気がする。殺された陣一郎はひきこもり設定なのかな。
殊能将之の全作通じるメインテーマは「レベルの違い」なのかも。
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*1:再読だからじゃないの、と慧眼の方は思っておろうな