貨幣の経済学 インフレ、デフレ、そして貨幣の未来 
「貨幣の経済学」岩村充(図書館)を読む。面白い。
元日銀の人が書いた中央銀行についての本。2008年発行。
このお金で支払いをする事を無制限に許可されたお金を法貨というが、日本では硬貨は法貨ではない。枚数制限がある。紙幣のみが法貨である。*1
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幕末の金流出(銀流入)→インフレについて書かれていたが、かえって混乱した。「あの頃は実質的に銀本位制だったから」というおぼろな理解で頭の中を整理してたのだが、「普通、金が流出したらデフレです」とミステリーにしてしまい、話の収拾をつかなくしてしまってる。その後の説明も何がなんだか。(元々は「大君の通貨」という小説で理解していた→過去リンク)
日清戦争の賠償金で金(きん)を得て、日本は金本位制となる。幕末で失った金の何十倍、あるいは百倍に匹敵する金を日清戦争で得た。
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金本位制中央銀行のバランスシート*2

資産 負債および資本
金100トン 銀行券10億ゼニー

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10ゼニーで金1グラムと交換できる場合、金100トンあれば10億ゼニー発行できる。金100トンが中央銀行のアンカー(裏付け)となる。
で、現在(2007年)の日銀は資産の6割が日本国債。日本国債をアンカーとして円を発行してるといって良い。
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第一次大戦後のハイパーインフレドイツについても説明している。
金マルクの裏付けのない紙幣マルクが1兆倍のインフレとなった後、レンテンマルクの新制度がハイパーインフレを5日で止めた話。レンテンは英語でレント。つまりドイツの土地(の値段)をアンカーにした貨幣。実は俺もよく理解してないが*3、レンテンマルクを紙幣マルクと併用させた途端、魔法のようにインフレが収束したそうだ。国外に持ち出せない資産=土地をアンカーとしたのが勝因…らしい。インフレ用の緊急策としては良いのだが、外国との取引となると「土地を外国に取られる危険性がある」との事でレンテンマルクは1年ほどでインフレ収束の役目を終え、廃止される。
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フィッシャーの利子率物価均衡条件
1+名目金利/1+自然利子率 = 1+物価上昇率  (なお 分子/分母
自然利子率は銀行(貨幣)とは無関係の概念で「現在の富と将来の富に対する交換比率」。将来が豊かであるなら自然利子率は高い。人口や技術水準あるいは資本蓄積によって決まる。……と書いてある。一見、潜在成長率と似てるけど違うっぽいな。
ちなみに日本銀行サイトのPDFにあった自然利子率↓

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終盤のテコの話や電子マネーの話は読み飛ばし。
感想リンク 本と奇妙な煙さん やぶにらみの鳩時計@はてなさん 山形浩生(翻訳家)

*1:ところで"らき☆すた地域硬貨(100円)"はどこまで強制通用力を持つものなんだろうか。

*2:はてな記法での表組みに失敗しました

*3:本書では詳しく解説している