アニメーションの色職人
「アニメーションの色職人」柴口育子(図書館)を読む。前半面白い。
宮崎アニメを支えた保田道世という色彩設計の人の伝記。アニメ製作裏ばなし。テレビアニメ草創期から「もののけ姫」まで。
なお、色彩設計という名称は最近の造語。もともと仕事的には美術監督の範疇だった。徐々に独立した仕事となり「アルプスの少女ハイジ」の頃、高畑勲が"色指定"という言葉を作り定着させた。その後"キャラクター色彩設計"または"色彩設計"と呼ばれるようになり*1、現在は色彩設計が定着しつつある。
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初期アニメ「狼少年ケン」の色は7色。白と黒。あとは中間の明度80、60、40、20、10という濃淡。
保田道世はトレース、仕上げ、検査(セル検)からアニメに入り、色指定に至る。絵は描けないとの事。
母をたずねて三千里」で宮崎駿
「当時は『サザエさん』なんかでピンクをペタっと塗った魚を出して、それで済んでた時代だったけれど、それじゃたまらんと。食べ物のおいしそうな感じとか、ガラスのキラキラした感じを少しでも出そうとか一緒にやったのが、やっちん(保田道世)。
例えば池の水面を描くのも、上から見た時と低い所から見た時と遠くから見た時では見え方が違うのに、今までは同じ色を塗ってた。『母をたずねて三千里』では そのやり方を捨てて、『低い所から見ると空が反射して光る、上から見ると水が透き通って見える』、そういう事を色指定に取り込んでいこうと思いました」
と証言。保田道世も応えて
「歩いていても、水溜りに枯れ葉が落ちるのに出会ったりすると、どういうふうに光があたってどの辺が白くなるか、ジッと見ちゃったりするの。テレビドラマの『北の国から』は参考になるシーンが多かったですね」
と続けて、宮崎作品を助けるようになる。
本書の後半になっていくと駆け足のようになってエピソードが大味となっていった。企業について書かれた本は日本では"社長のヨイショ本"になる事が多く、読むに耐えないものが多いのだが、本書も少しその弊にとらわれてる。"保田道世は凄い、忙しいけど頑張った"の類いを連呼。
なお、スタジオジブリでは出来高制から正社員への移行が「おもひでぽろぽろ」の頃起こったとの事。出来高制の「魔女の宅急便」スタッフは世間相場の約半分の収入だったそうだ。
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"色彩設計"という言葉に注目したのはアニメ映画「鉄コン筋クリート」が最初だ*2色彩設計:伊東美由樹。
あとは「ソウルイーター」「桜蘭高校ホスト部」の中山しほ子色彩設計が好き。
今クールでは「リストランテ・パラディーゾ」が良いかな。
背景の美術監督の仕事と混同してるだけかもだが。
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アニメ業界リンク BusinessMedia誠  はてな匿名ダイアリーさん アニメばっかり観てたら馬鹿になるわよ。アニメ作ってるなんてったら相当な馬鹿よ。さん

*1:火垂るの墓」の頃か。

*2:ブログの検索便利だなー。