世界を不幸にしたグローバリズムの正体 
「世界を不幸にしたグローバリズムの正体」スティグリッツ(図書館)を読む。2002年出版。
経済学の本、というより政治関連ドキュメントを読んでるみたいだった。
この本に書いてある事を7文字に省略すると
"IMFは疫病神"。
グローバル経済そのものについて、著者は世界に幸福をもたらすものと信じてるのだが、IMFの導入方法は不幸をもたらすばっかりだと繰り返し繰り返し繰り返し書かれてる。
エチオピアボツワナ・タイ・韓国・中国*1インドネシア・マレーシア・ロシア・ポーランドチェコなどの事例を挙げ、IMFの方針は如何に失敗し、IMFと逆の方針を取った国は如何に成功したか。そんなん。
IMFというのは要するにアメリ財務省の意思が反映されるらしい。アメリ財務省ウォール街の金融会社から人材を受け入れている。で、IMFは危機にある国に金を貸す際「金融市場の自由化」など条件を付ける。国内の格差は広がり、外貨の流入と流出は桁外れになり、脆弱な金融システムが投機により通貨危機に陥る、といった一例など。
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ウルグアイ・ラウンド以降、発展途上国は貧しくなった。先進国は途上国へ工業製品の市場開放を要求し、途上国からの製品(織物・農産物)に対する市場開放を拒んだ為。(24頁)
エチオピアなど発展途上国では"税収"より"海外からの援助"の方が安定した収入だった。頭で考えるより調べる事が大切。(53頁)
IMFの指導に「充分な外貨準備金を持て」というのがある。一般に外貨準備金は米国債*2である。
IMF管理下の弱小国の企業が米銀行から1億ドルの融資を受けたとする。金利18%。
これに対し慎重な弱小国は1億ドルの外貨準備金を持つ。米国債の利率は4%。
アメリカぼろ儲け。(104頁)
IMFトリクルダウン経済学を信奉する。経済が発展すれば、初期は富裕層が富み、格差は拡大するが、最終的に貧困層も豊かになる、という理屈。
スティグリッツは懐疑的。トリクルダウンの考え方は廃れた、と書いてある。
19世紀のイギリスは国全体が繁栄したが、貧困層は拡大。1980年代のアメリカは経済成長下で貧困層の収入は低下していった。クリントン政権はトリクルダウン経済学に反対し、貧困層を直接に救済しようとした。(121頁)
アメリ財務省は自国でトリクルダウン経済学が破棄されたので、IMFと世銀で採用し、世界中に災厄を撒き散らした。(124頁)
・1997年、IMFは日本の提案である「アジア通貨基金」を握り潰す。IMFの独占を維持する為。(168頁)
その後、日本の構想は「チェンマイ・イニシアティブ」として生きている。
アメリカ公正取引法について。
外国のライバル企業が原価より安く製品を売っていると考える米企業は、そのライバル企業に特別な関税をかけるよう米政府に求める事が許される。ダンピング関税。
で、アメリカの原価の決め方は極めて恣意的。(248頁)
スティグリッツは2001年ノーベル経済学賞受賞者。
解説はリチャード・クー
感想リンク 目黒川の畔にてさん 梶ピエールの備忘録さん 
連想小説 大君の通貨―幕末「円ドル」戦争

*1:中国はIMFから金を借りた訳ではない。IMFが勧める"失敗する市場経済導入"と対比する意味で中国独自の"成功した市場経済導入"の事例を取り上げている

*2:アメリ財務省短期証券