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「大君の通貨―幕末「円ドル」戦争」佐藤雅美(図書館)を読む。面白い。
幕末歴史小説。
オールコック外交官(英)・ハリス外交官(米)・水野忠徳の3人が主人公。
読後すぐの感想。
・政治に近い所にいると儲かる
・外国人の言う事もあてにならない
以下ネタばれ。
日米修好通商条約を結んだハリスは通貨の「同種同量交換」を主張。
"ドル"に含有されている銀と"分(日本の通貨)"に含有されている銀は同等に交換されるべき、という考え。1ドル=3分となる。
(簡略化させる為に多少話を歪めるが)*1幕府の主張は、買える品物で考えれば1ドル=1分が妥当という主張。
結局ハリスの主張が通り、とんでもない結果が引き起こされる。
当時、日本の金と銀のレートは金1グラムに対し銀5グラム。国際レートは金1グラムに対し銀16グラムだった。
つまり、横浜から金1グラムを上海に持っていくと銀16グラムになり、それを横浜に持って帰ると金3グラム銀1グラムになった。その金3グラム銀1グラムを上海に持っていくと銀48グラムになる寸法。外国商人ボロ儲け。
外国商人は日本で小判を手に入れる為に奔走した。日本の商人も通常「1両=4分」なのだが、外国商人相手には「1両=6分」で交換し、これまたボロ儲け。
日本の金の流出・銀の流入が起こったわけだが、オールコックは この単純すぎるマネーゲームを鎮火させる為
「現行の 1両=4分 から 1両=12分にして国際レートと揃えれば宜しい」
と幕府に助言。
この助言を受け入れた事が幕府の命取りになったと著者は指摘。
通常用いられる貨幣"分"の価値が1/3になった事から、物価は3倍まで跳ね上がる。価格転嫁できる商人は まだ良かったが、固定の俸給を貰う武士は生活苦へと転落。
著者的結論→幕府は、外国人の誤った助言により引き起こされたハイパーインフレで倒れた。
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結局、幕府の主張どおり「1ドル=1分」が妥当だったという話。何故、1分の銀含有量が少なかったかというと幕府は財源捻出のために改鋳を繰り返していたから。
「それでは贋金が生まれてしまう」とオールコックは考えたが、銀山を幕府が管理していたので無問題だったのだ。
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ただ読後思ったのだが、もし「1ドル=1分」で貿易を始めてたら外国人による贋金事件が起こったかも。
感想リンク 見えない道場本舗さん
関連リンク 石黒憲彦氏の「志本主義のススメ」
*1:より正確に言うと金と銀の比率が関わっている。