はだえのした

膚(はだえ)の下 asin:4150308829
「膚の下」神林長平(図書館)を読む。面白い。
ホムンクルスの話。または偏差値70以上の「北斗の拳」。*1
「あなたの魂に安らぎあれ」「帝王の殻」に続く3部作目。各巻は独立している。最初に「膚の下」を読んでみたかった気も。
阿部謹也(歴史学者)がこんなような事を言ってた。現状に満足している者は何かを考える必要性がない、何らかの不整合感、不満や軋轢を持つ者は考えて前に進む事ができると。本書の読み始めで、まず思い出す。
ぶ厚い本だけど、展開は早いと思った。シリーズものを圧縮したようなかんじ。
あと泣いた。474頁あたりからのくだり。なんてSFな涙なんだろうと涙を解析したりもした。本書はSF・PF(政治的虚構小説)の感覚を持つ人に必読の書と思う。ミステリ的な謎の開示を無効化してるのも面白かった。ミステリ的謎は精々、現状分析の一助に過ぎなく個体の生存時間が少し左右されるだけ。本書はそう思わせるほどのスケールだった。
感想リンク 美しい暦BLOGさん fuzzy Weblog@hatenaさん +Kurage Note+さん 今日読んだ小説を語る。さん
連想書籍 isbn:4758410259 isbn:4061824163
読み方 俺の部屋は汚い部屋なので、いつの間にか本書に絆創膏が貼り付いてた。「なんか合ってる」と思い、そのまま読んだ。まあ、通勤で読んだ美しい暦BLOGさんには負けると思う*2。なんとなく。
↓以下ネタバレ 
ろくでもない現況から、ろくでもないしがらみでグロテスクな未来を造りだすハナシと言えない事もない。そもそも撤退戦なのだ。ベストはどこにも無くビターな選択肢をひり出すしかない。慧滋のビジョンは「人造人間ならでは」という説明があったけど、東洋人だから小説で発想できたというべきか。動物と人間をごっちゃにできる混沌カオス)。鳥になるのは日本武尊だし。
秘密保持の為、日本武尊化してしまった皆さんだけど、発想の道筋ができているのだから、他の人でも開発可能な技術ではないだろうか。原爆のように。 生き残って秘密保持の体制を構築するほうが有用なのでは。まあ、オチだから仕方ないとも思うが。
「弱者は保護」って思想が出てくるけど、ひょっとしたら食物連鎖の観点から言ってるのではと気付く。自分が脅かされないなら下は賑わっていた方が良いみたいな。

*1:「膚の下」と「北斗の拳」=どちらもその後の地球を描いているけど「膚の下」に出てくる人たちは頭良すぎで「北斗の拳」は悪すぎ

*2:通勤で「膚の下」=尊敬してます