男たちのゲームセット―巨人・阪神激闘記 (角川文庫)
「男たちのゲームセット」山際淳司(古本)を読む。面白い。
スポーツ実録。
1973年に優勝争いをした巨人と阪神を描いたノンフィクション。
王・長嶋が打ち、江夏・堀内が投げ、山際淳司が雑誌の記者として最後までもつれ込んだペナントレースを追う。
「紳士たれ」とグラウンドマナーを守り、統率の取れた集団である巨人と
監督批判など内紛を繰り返し、その迷走するエネルギーを噴出させて勝つ阪神を、対比させ、多方面からルポしている。
例えば巨人の黄金時代は長嶋の入団から始まる。観客数の増加から見て、それは間違いない。しかし牧野茂コーチの就任から始まったという見方もできる。
当時の川上監督はメジャーリーグから野球を貪欲に吸収しようとしていた。具体的にはドジャースのスタッフだったアル・カンパニス氏が書いた「ドジャースの戦法」という本で書かれた野球理論を巨人に導入しようとしていた。それを血肉化したのが牧野茂コーチだったようだ。
海外の技術を日本でもできるように学び、作り変え、みがき上げていくという当時の日本企業のような事を巨人がしていた、というのはちょっと意外だった。巨人も最初から巨人ではないのだな、当たり前だが。
常勝となった巨人は「管理野球」と言われ、嫌われもしたが、怒涛の9連覇を為すのだった。
阪神のエピソードとして、江夏豊と辻恭彦のバッテリーの話が面白かった。「おお振り」を思い出した。
辻は江夏の球を受けて、初めて野球の面白さがわかったと言う。江夏の制球力なら、完璧にピッチングを組み立てられた。
外角にボールになるカーブを投げた後、内角いっぱいの速球、そしてストライクゾーンから逃げる変化球と狙ったコースに投げられる。キャッチャーのイメージする球をそのまま投げてくれるピッチャーはそうはいない。
また江夏も辻と組むのを好んだ(田淵よりも)。辻とならサインなしで息を合わせる事ができたという。
最近、野球の試合なんか全然見てないが、(WBCも見てない)、こういう一種の二次創作なら読めるなあ。