プリズム (創元推理文庫) 
「プリズム」貫井徳郎(図書館) を読む。面白い。初・貫井徳郎
連作風。章で決めた犯人が次の章の探偵となり、最初の章に循環するウロボロス構成。
限定された情報だと限定された解答(その条件において正しい)にしか たどり着けない。では多くの情報を持つ読者がたどりつくべき結論は?
犯人は大峰ゆかりではないだろうか。飲み会の後、大峰ゆかりと二人で会い、その後に井筒を部屋に呼ぶスケジュールは被害者の作為が感じられる。大峰ゆかりを部屋まで誘い、井筒が来るか軽い賭けを被害者はしたかったのでは。チョコは伝票を見て被害者が大家の所へ取りに行っているので 大峰ゆかりが見とがまれなかった可能性は高い。あとは眠った被害者に悪心を…。チョコ混入は南条先生で良いと思うが、食べさせてどうこうというより、食べさせることが目的の陰湿な愉快犯とみる。その場で食べなきゃ実効性がないので。ガラスは無関係な泥棒のせいとする。(鍵の開いている部屋に押し入るかという問題もあるが泥棒が間抜けな事もある)三種の無関係な事件が同時に起こる乱雑さだが、これが一番しっくりくる。小学生が犯人というのは理論的には可能と思う。偶然南条先生がチョコを買うのを外で見かけ、配達日を店員から聞く等して知り(買う時に南条先生と接触してないのは41頁参照)、盗聴装置などでチョコが届くタイミングを見計らい(グループで見張るというのは村瀬の事件の秘密保持と反する)、混入チョコを用意し(山名か村瀬の両親が医者とか)、すりかえて殺害し、翌朝、テレコかMDかMP3か携帯電話に録音した音声で公衆電話から通報する(チョコをすりかえた人物と通報した人物は同じならすっきりするのは確か)しかし、手段と効果を比較した時、手段のリスクが大きすぎる。そこまでできるなら南条先生を殺したほうが早い。殺す気はなく、チョコをすり変えて南条先生が睡眠薬使いである事を証明したいだけなら、やはり手段と効果が釣りあわない。準備が周到すぎる。
そのほか
南条先生の児童わいせつは冤罪で山名か村瀬を傷つける振り方をした可能性も考えたが、101頁の前科(未遂のようだが)もあるので、それは山名を信じる。大家がチョコを渡したのが夕方なら妹でキマリなんだが。
ちなみに事件は3/14(日)に起きていてこの年は閏年閏年でなければ事件翌日が日曜日となり、学校が休みとなってしまうので。
本書の弱点は最後の探偵のキャラが少し薄っぺらい。



その他、解答編を書かないミステリというと麻耶雄嵩の「夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫)」があり、
http://www006.upp.so-net.ne.jp/eqfc/private6.html
↑を読むまで、つまり最近まで事件の構造がわからなかった。(Ellery Queen Fan Clubさんの中の頁)
(http://d.hatena.ne.jp/kotoko/20041118#1100803385のコメントのid:yosituneさん経由)