面接に失敗して、もう年内の就職が消えた帰り道の電車(実際わかったのは家に着いてからだったけど)、午後の早いうちなのにとても座る事のできない混み具合だった。
右隣を見ると背の低いおばさんが吊革に掴まっていて、驚いたことに俺と同じ腕時計をしていた。アラビア数字で日付と曜日表示のあるシンプルなSWATCH。この確率は一体どのくらいなんだろうか、気付かない可能性もあった訳だと思うと気が遠くなった。奇跡的なことも意味なく起こり、しかも気付かずにやり過ごす事も多いのが世界ってやつなわけだ。