NHKスペシャル『橋は大丈夫か〜しのびよる劣化〜』

http://www.nhk.or.jp/special/onair/080609.html
途中から見た。橋(首都高などの陸橋含む)の現代ドキュメント。
某県での道路行政密着。
「橋は造れば造るほど維持費が膨らんでいく」
という、よく考えれば当たり前の話を解説。成程、橋の数の掛け算だ。しかも財政難とか言ってメンテを疎かにすると橋が落ちるという。(実際の事例あり)
「橋を新規に架ける」際は、膨らんでいく維持費の事を考えなくては、という県の結論。
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橋関係の企業側もメンテ工事を嫌がるとの事。入札の結果、不成立となった事例が最近増加。
予想外にメンテ工事が長引いて赤字になってしまうそうだ。
以前は、メンテ工事が割に合わなくても、"談合"で「次に新規工事が取れるよう密約」してたのだが、談合摘発・新規工事減少で、そのシステムがまわらなくなったとの事。
それどころか、橋関係の企業自体が急速に減っている。
メンテ工事の積算方法を見直すべき、とNHK
視聴リンク 建築写真_日記さん

八月の砲声 下 (ちくま学芸文庫)
「八月の砲声」下巻 バーバラ・タックマン(図書館)を読む。面白い。
第一次世界大戦を描く歴史書。著者はアメリカ人。筑摩叢書版で読んだ。
上巻感想で「銀英伝」みたいと書いたが、発売後のレビュー(1962年)でも

みごとな編集技術。女史は歴史家としてばかりでなく、作家としても優れている。登場人物はどれも配役よろしきを得て、オペレッタを観ているようだ。背景が克明に示されているし、皮肉もよく効いてる。
ニューヨーカー誌

と評されている。バカ売れしたそうだ。
14章 独強い。この巻前半の感想は とにかく独強い。後退していく仏。
「戦いの終わった後の戦場は信じがたいほど凄惨な光景だった」
「何千という兵が死んだまま立っていた。地面から60度の角度で、アーチ型に折り重なった遺骸の列が…」
「大砲ほど恐ろしいものはない。…毎日2、3人の兵士が発狂した」(以上、仏将校の報告)
15章 露が独に進軍。独の計算では、露の動員は6週間かかる筈だったが実際は2週間だった。後退する独。
16章 露軍同士の連携の悪さもあり、タンネンベルクで独大勝利。しかし、独仏の戦線からタンネンベルクに まわされた独軍あり(結局タンネンベルクの戦いには間に合わなかったが、後に影響あり)
17章 独のベルギーでの悪行。占領後のベルギー市民の抵抗に対する独の報復。町ぐるみと見做し、町を焼き払う。
「これで都市3つを壊したぞ。3つだぞ! もっとやってやるぞ!」(独兵が記者に向かって)
世界世論を敵にまわす。パンチ誌(漫画)で残虐に描かれるなど。
18章 海上封鎖について
19-22章 仏の退却と反攻
無防備都市宣言をしてパリを破壊から守ろうとする仏内の勢力。
毎日1機か2機飛行機がパリに来て、爆弾を2個か3個落として18時頃帰っていった。また「諸君は降伏するしかない」旨の紙が大量にばら撒かれた。
政府がパリからボルドーに移る。去る前、パリ防衛を任す将軍に「全力を尽くして守るよう」言い渡す。将軍は「その意義を心得ているのですか。それは滅亡であり破壊であり、橋のダイナマイト爆破をパリの真ん中で起こすということなのですぞ」と問い返すが「全力を尽くすのだ」と再度通達。
モルトケは仏の退却がそのまま独の勝利なのか疑っていた。別名「憂鬱なユリウス*1」。現地の将軍は無邪気な戦勝報告を上げてくるが
「勝利とは敵軍の抵抗力を根絶してしまうことだ。100万人からの兵が対戦した場合、勝った側は必ず捕虜を得る。わが軍の捕虜は一体どこにいるんだ。…他の地域の捕虜全部を合わせても多分1万か2万だろう。仏軍は計画的で秩序ある退却をしているとしか思われない」
と戦況分析。数字を見る目。
独は現地将軍に比較的自由な裁量を与えていた。独第1軍が、パリ侵攻よりも他地域の仏軍掃討を優先させ方向転換した途端
側面を突け
と仏が反攻。マルヌ会戦
仏総司令ジョフル訓示。
「攻撃に全力を傾け、敵を撃退せよ。前進不可能の状態に陥った部隊は いかなる犠牲も省みず陣地を死守し、退くよりは死を選べ」
マルヌ会戦はパリのタクシー100台も活用された。活用というか徴用。戦地までピストン輸送。
エピローグ マルヌ会戦で仏が押し返し、第一次世界大戦は膠着状態に入る。6週間で仏に勝利する独のスケジュールが崩壊。
マルヌ会戦自体は詳述されてない。が、独がマルヌ会戦で勝利しなかった事について、歴史のif を列記。小説のように一つに収束されていく読書の快感があった。
if タンネンベルクに独軍を引き抜いて派遣しなかったら
if ベルギーに駐留する独軍が これほど必要でなかったら
if 仏総司令ジョフルが撤退続きの絶望的状況で、揺るがぬ勝利の信念を持ち得なかったら*2
など。また独将軍は
「仏軍の兵士は すみやかに立ち直れる…10日間も退却を続け、地に伏し眠り、疲労で半死半生の状態にある兵士でも…攻撃にかかる事ができるなどとは…ドイツの陸軍大学では教わらなかった」と。
また「八月の砲声」全ての章が、「何故第一次世界大戦は長期戦になったのか」という命題に沿って書かれてある事にやっと気付いた。
なお、本書で著者はベルギーより勲章を授与されている。
感想リンク 東長崎機関さん
人物表ほか

カイゼル 独皇帝。ヴィルヘルム2世。
モルトケ 独将軍。有名なモルトケとは別人。
フォン・クルック 独第1軍司令官。側面を見せた人。
OHL 独軍総本部。
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ジョフル 仏総司令官。
ガリニエ パリ防衛軍司令官。側面突く人。
ポアンカレ 仏大統領。
GQG 仏軍総本部。
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フレンチ卿 英派遣軍総司令官。
キッチナー 英軍人。フレンチ卿を派遣した。
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*1:ユリウスはシーザーのこと

*2:上巻読んでるとジョフル馬鹿かと思うが、下巻では良い鈍感ぶり