「魔法少女まどか☆マギカ」10話 


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エンドレスエイト回。または剥奪されていた主人公性の反転、もしくは失われていたブギポ設定の回。
青の魔女化*1と共に世界のループ設定はファンの中では既定路線として予想されていた展開ではあった。しかしそれでも面白い。鉄板としか言い様がない。球種もコースもわかっているのに打てない剛球の如し。
とはいえ10話には不安点があった。8話9話の盛り上がりの余波で、10話は中だるみしてしまうのではなかろうかという危惧。
・1段落ついて、また伏線を積み上げていかなければいけないのではないか。*2
・キャラが死んでしまい、深刻なキャラ不足に陥るのではないか。
魔法少女が計3名失われてしまい、残っている者と行ってしまった者の数が逆転してしまう状況はストーリー展開に支障を引き起こしかねない。pixiv『退場組』タグの2次創作のほうが素材として面白いとすら思ったり。(ふぁっ熊さん参照)
杞憂だった。伏線のストックは豊富にあったし、キャラはリサイクルという反則手を使ってきた。
ただのリサイクルではない。ドラマツルギーとして、退場したキャラを貶める描写を挿入してきた。これは「魔人探偵脳噛ネウロ」(漫画)でも見られた手法である。ネウロ11巻で最高のエピソードを提供し、しかもその後すぐに「そんな半端な悪」と最高エピソードのキャラを否定している。常に最新のエピソードを面白く思わせなければいけないのは作り手に課せられた宿命である。
さて。
主人公は本来、主人公性を備えた主人公だった事が今回明らかになった。逆に言えば1話から9話までは主人公性を剥奪された主人公の苦悶の記録ともいえる。正義の化身たる主人公が その力を奪われて、"力なき正義"として状況に対処する様がシリーズの1話〜9話である。これは新しい。
では状況を十全に知り、力を持つほむらは正義だったかというと微妙である。彼女は世界ではなく個人の救済に傾斜しすぎている。いじめられっ子がイメージできる狭い正義の限界といっても良いかも。陽性の主人公が10話で見せた"僕らがよく知る正義"とは やはり違う。
赤とほむらについて2点言及したい。
ほむらは赤に1度救われている。8話で青を殺そうとしたほむらを赤は拘束し、殺人の阻止に成功した。1線を越えようとしたほむらを結果的に赤は止めたことになる。5巡目となり、ほむらの精神が限界に近づいている可能性も有り得る*3
また"赤が魔女化した青と一緒に死ぬ"という選択は、"魔女化した主人公を置き去りにして次の並行世界に移行する"という4巡目のほむらと対比するのも興味深いかも。どちらが正しいとも言えないのだけど。
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言うまでもなく10話は ほむら回だ。ほむらが成長する回と言い換えても良い。
劣等感に打ちひしがれていた冒頭と較べると10話終盤のほむらは別人のような成長をしている。アレが成りたかった自分なのかは議論のある所だが『他人に迷惑ばっかりかけて、恥かいて…』とは違っているのは間違いない。ほむらがQBと契約した願いには達していないが、主人公と出会う前のほむらが感じていた悩みは解消しているように思える。
ラノベで「ブギーポップ」シリーズという小説があり、1つ不発となっている設定がある。
(ブギーポップは)その人間がもっとも美しいとき、醜くなってしまう寸前に、苦痛のないやり方で一瞬で殺す
という都市伝説としての設定。「魔法少女まどか☆マギカ」では、ブギポで死んでいたこの設定が甦って、隠し味になっていると見てる。「もう何も恐くない」の黄色、「あたしって、ほんとバカ」の青*4、「独りぼっちは、寂しいもんな」の赤。退場寸前の3人が見せた散り際の美は 偶然ではなく製作者の意図的な演出だろう。ブギポでは女子高生の間にのみ流布されている都市伝説として書かれているのだが、なるほど女子好みなシチュに思える。ブギポ本編では効果的に使われず、設定としてほぼ死んでいたのだが、「魔法少女まどか☆マギカ」で実際に適用させ、女子ファンの獲得に貢献したのではないだろうか*5
過酷な状況など無い方が良いに決まっているのだが、過酷な状況がその人物の真実をあぶり出し、ドラマを生むことがある。1巡目の主人公はリスクと引き換えに自信を得ていたようだ。遅かれ早かれ人間は死ぬのだから、生き場所・死に場所を見つけられずに時間だけが過ぎるというのが最悪という考え方もなくはない。(俺は ぬくぬくと200年くらい長寿する予定だが)
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では、ほむらのループを検証する。
3巡目ワルプル後のグリーフシードは魔女化青を倒して取ったものではないかとネットでは噂されている。その考察は当たりだと思う。ストーリー的にしっくり来る。主人公にとって心情的に使えなかった、ずっと持っておきたかったグリーフシードだったというのも納得。
しかし、魔女を倒した魔法少女がグリーフシードを得るという原則を採れば、青のグリーフシードは本来ほむらが持つべきで、最初にほむらから主人公へグリーフシードが移行されたという前段があったと見る。何故移行されたのかという答えは主人公と青の関係性の深さからだろう。
3巡目、もしほむらがワルプル後のグリーフシードを保持していたのなら、強制的にほむらが主人公のソウルジェムを浄化して、この時点でほむらの契約は為されていたと見るべきか。(いずれ主人公は魔女化するとわかっているが、それをいえば3巡目の黄色のように早い時点で見切らなければならない)。
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3巡目に交わした約束を達成させる為、4巡目のほむらは単独行動を採るが、ワルプル打倒に失敗*6、同時に無知な主人公が契約。
4巡目の失敗を受けた5巡目(1-9話)で
・単独では倒せないワルプル打倒の為、共闘の魔法少女を探す
・QBと出会ってしまって以降は、契約について主人公に或る程度情報開示する
と戦略を練り直している。第1戦略は破綻したが、第2戦略については不本意ながら充分すぎるほど主人公に情報を与えてしまい、4巡目とは状況が異なることに留意だ。
追記 4巡目と5巡目では主人公のポテンシャルも違っているように思える。
4巡目のQB「彼女なら最強の魔法少女になるだろうと予測していたけど、まさかあの"ワルプルギスの夜"を一撃で倒すとはね」
5巡目のQB「宇宙の法則をねじ曲げることすら可能」「神にだって…」
断言はできないのだけど、QB事前見積もりの時点で主人公のポテンシャルが大きく違っているのではなかろうか。そもそも1-3巡目の主人公のポテンシャルについて大仰な言葉は出てきてない。これは"希望と絶望の相転移"とか"感情エネルギー"あたりで説明すれば、
1-3巡目の主人公は漫然と契約してしまったので絶望が足りなかった、
4巡目の契約には危機感があった*7
5巡目は絶望コンボで感情エネルギーMAX
というロジックか。
ただこの辺り断言できないトコロでもある。1-3巡目のポテンシャルも言及がないだけで、"やはり主人公は神の領域"なのかもしれないし、そもそも1-4巡目て「全て結果は同じ」と言えない事も無いんだよなー。良くも悪くもなっていない。つまり全て
・ワルプルは倒される
・主人公も死ぬ(魔女化含む)
・ほむらは生き残る
の繰り返し。歴史の自己修復機能が働いてるのを疑う状態。
まあ、主人公が魔女化するとしないのとでは周囲に対する影響は違うのだけど、ほむらにとって関心事の外であり、時をかける理由と周囲の被害状況は あまりリンクしない。追記終了
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ラストがOPとは「四畳半神話大系」のような演出だが、「魔法少女まどか☆マギカ」の方があざといくらいに効いているなー。曲調はノイタミナみたいだし、歌は中学生がカラオケで歌っているような鼻にかかった声であまり好きではない曲なのだが、歌詞といい、映像といい、そんな個人的感想を吹き飛ばす出来だ。
なによりOPが主人公ではなく、ほむらを歌っていた仕掛けがトリッキーで心地よく騙された。

OP歌詞リンク goo音楽

↑この2人の主人公は『主人公性を剥奪されていた主人公』と『主人公性を持っている主人公』と受け取った。

↑今、注目すべきは猫でなく、水面に横たわるという構図かと。……ワルプルじゃねぇか。
感想リンク たまごまごごはんさん subculicさん 白狼PunkRockerSさん From Luck To Pluckさん きこりの日記さん 海外の反応とかさんまとめ ワゴンの神様さんまとめ のんたんのanime大好きブログさん
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『魔法少女まどか☆マギカ』#10で、鹿目まどかが既に魔法少女でした
巴マミ的には、『魔法少女まどか☆マギカ』#10の1周目が一番良い世界だったのでは?
『魔法少女まどか☆マギカ』#10のループ3周目の世界で、佐倉杏子はどういう理由で見滝原に来たのだろう?
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で、今後の展開予想。「Fate/Zero」でいうと主人公はライダーのような戦闘スタイルか!!という予想が外れたので、心おきなくどうせ外れると思って大胆に予想しよう。
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来週はほむらが魔女化すると予想。ほむらの能力はチートすぎる。11話の最後で魔女化するんじゃないのかな。
あと、主人公が前世のほむらを思い出し始めているのって、宇宙が壊れかけてるんじゃなかろうか。

*1:とはいえ、青は1話冒頭の魔女になると外人考察スレで予想されていた。魔女違い。間違った観察からの間違った考察だったのだけど、青の魔女化自体は正しかった。放送は生もので実際流してみないと視聴者は どういう見方をするかはわからないものだ。きっと並行世界では"青の魔女化"という予測がネットで流布されず、8話の衝撃が更に深かったろう。

*2:ほむほむ的に言い直すと、爆弾を使い切ってしまったので、また夜中にコツコツ自作する必要性があった。

*3:どうせ魔女になるのだから 死んじゃえバインダーのロジックは3巡目の黄色と同じ。それも一理あるが、"僕らがよく知る正義"とは違う。

*4:台詞時の瞳孔の開き具合が印象的。

*5:本アニメは女子からも強い支持を得ているのではないかと思っている。根拠はpixiv。過去、俺がpixivで見ていたアニメよりも女子率が高い気がする。

*6:4巡目のほむらと黄色の関係が不明。ほむらはQBを殺しまくっていた筈なので黄色との関係が良好とは思えない。おそらく黄色は3話の魔女に負けたのだと思うが最悪の可能性も除外しないでおこう。

*7:というか契約の願いが"ワルプルの打破"か"ほむらの救済"じゃなかろうか。

*8:この人のQB性善説パラレルワールド漫画は全部面白いっす。